Kerr Stuart 0-4-2
"Tattoo"  -1

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今度はイギリスのナロー
Tattoo年内はのんびりしようかなと思っていましたが、つい工作を始めてしまいました。
で、今回作るのは、Kerr Stuart の"Tattoo"という名前の機関車です。エンジンはスライドバルブ、バルブギアはハックワース式。スケールは16mm、ゲージは32mmガス焚きです。
左の絵は完成予想図です。こんな感じに出来ればいいなと思っています。


エンジンの製作
エンジンの製作_1先ずはエンジンから作り始めました。始めに30x30の真鍮角棒の切断(これが一番疲れる)からですが、とりあえずシリンダーの長さ(22mm+α)で2個分を切り出し、さらに、その切り出した塊からシリンダーとバルブチェストと中間の部分とに金鋸で切り分けます。次に、シリンダーとバルブチェストの穴をあけ、それから、それぞれの外形をヤスリで整えました。

エンジンの製作_2いきなり完成していますが…。今回は、シリンダーブロックとバルブチェストの間にポートブロックが挟まる三段重ねの構造です。中間のポートブロック部下面は、シリンダに角度(対レール約3度)を付ける為、斜めになっています。

エンジンの製作_3右側のエンジンを分解したところです。今回のエンジンで今までと一番違うところは、ピストンの溝とスタフィングボックスにOリング(フッ素合成ゴム)を使った事です。ピストン(直径10mm,溝径6.5mm,溝幅2.1mm)にはP6という内径5.8mm、太さ1.9mmのものを使いました。シリンダとバルブチェストのスタフィングボックスには、それぞれシリンダ用はピストンロッドの軸径3mmに対して内径2.8mm太さ1.0mmのものを、バルブチェストの方は、バルブロッド2mmに対して内径1.8mm太さ1.0mmのものを使いました。


クロスヘッドとスライドバー
クロスヘッド上の写真と前後しますが、製作途中のクロスヘッド(写真左側2つ)と、完成したクロスヘッド(写真右)です。クロスヘッドは、板を折り曲げたアングルを2つ向かい合わせにロウ付けして作った四角穴パーツ(写真中央)に、ピストンロッドを受けるパーツ(写真左の12mm真鍮丸棒を削り出し)をロウ付けして作りました。

スライドバースライドバー(2x3鉄角棒)は、ロウ付けした真鍮パーツを介して、シリンダに裏蓋と一緒にネジで取り付けます。いつものように動きの悪いところはガタを作って誤摩化しましたが、スライドバーの調整にはいつも苦労します。


車輪の製作
車輪の製作_1実は、今回車輪用にと35mmと30mmの鉄の丸棒を購入したのですが、なかなか切れなくて、左の写真のところまで切ったところで挫けました。

車輪の製作_2結局、ハンスレットの車輪を作る為に購入したデンスバーが残っていたので、それを使うことにしました。
デンスバーは、普通の鉄に比べるとサクサクといった感じで切れますが、それでも、動輪用とポニートラック用の輪切り6個を切り終わるまで1時間半ほどかかりました。

車輪の製作_3完成した車輪です。上が動輪用、下がポニートラック用です。
デンスバーは旋盤でもよく削れます。本当にサクサク削れるので作業が速いです。反面、ハンスレットのときはネジ切り中に欠けたりして、ちょっともろい感じもしましたが、でも、大丈夫でしょう。サイズは、動輪が踏面で直径32mm、ポニートラックの車輪が直径22mmです。


フレームの製作
フレームの製作_1フレーム側板は、いつもと同じ1.6mmの鉄板を使いました。ネジ穴あけと切り抜きは、これもいつもと同じ方法で二枚重ねです。

フレームの製作_2穴あけと切り抜きが終わったフレーム側板です。

フレームの製作_3仮組みをしました。
フレームの組み立てに使用しているネジは全てM2を使ってます。で、ちょっと歪んでいるみたいで、平らな所に置くと少しガタガタします。コの字に曲げて作った梁の直角が微妙に出てないみたいです。コの字曲げは何度やっても難しいです。


ポニートラック
ポニートラックポニー従台車です。JNR8620の先台車と同じ作り方で作りました。ブッシュを圧入したコの字型の枠と、フレーム横梁に取り付ける為の板の組み合わせです。JNR8620のときに付けたバネは今回省略しましたが、レールへの追従性を考えると、何か簡単な方法でもバネは付けた方が良さそうな気もします。


エンドビーム
エンドビーム実車のエンドビームを写真で見ると、意外と薄い板を使っています。でも、そのままスケールダウンして薄い板で作ると直ぐに曲がってしまいそうなので、いつもと同じ1.6mm厚の鉄板で作りました。左の写真上が前用、下が後用です。前用の上部には写真の様な台形状の板(厚み1.0mm)をロウ付けしました。


軸箱
軸箱車輪(車軸)のフレームへの取り付け方は、当初ハンスレットのときと同じU字形に切り取った部分に車軸ブッシュを填めてから、リテーナーで押さえる方法(3つ上の写真)にするつもりでしたが、色々不都合なところが出て来たので、写真のような形に変更しました。軸箱の固定には手持ちのM1.7六角ボルトを使いましたが、ちょっと頭が大きかったですね。M1.4にすれば良かったかなと。


仮組み
仮組みまたまた仮組みをしました。
パーツを作っては、その都度仮組みをして眺めるのが好きです。そうして、これまでの過程を振り返ってみたり、完成した姿を思い浮かべてみたり…。それから、組み立ててみないとわからない不具合もあるので、それを修正したり。要するに、しょっちゅう組み立ててはバラしてるということです。


ポニートラックの改造
ポニートラックポニートラックですが、やはり気になるのでバネ付きに作り直しました。写真のように横梁を改造し、ポニートラックとの間にスプリングを入れました。これまでポニートラックの車輪をレールに密着させるのが結構難しかったのが、この、本のちょっとしたことでレールにぴったり接するようになりました。


クランク製作
クランク_1クランクは、2 Truck Shayのときと同じ方法でクランクピンの穴をあけてから、外形を糸鋸で切り抜き、ヤスリで仕上げました。ところで、クランク間隔ですが、計算では6.5mmにするところを勘違いで7mmであけてしまいました。作り直すのも面倒なので、このまま先に進めてしまうことにします。0.5mmの違いということは片側0.25mmづつということで、シリンダの前後の蓋の内側を少し削って誤摩化すつもりです。いつものことですが、なかなか計算通りにはいきません。


連結棒と主連棒
連結棒と主連棒ブッシュのはまっている四角いパーツは、車軸に対して直角が出ていないとまずいので、クランクと同じく旋盤で穴をあけてから突っ切り、その後糸鋸で四角く切り抜いてからヤスリで仕上げました。連結棒は、はじめに四角いパーツに車軸間より少し長目のステンレスロッドの一方の先端をロウ付けしてから、もう片方のパーツと共に車軸にはめ、長さを調整しながらぴったりになったところで車軸からそーっと抜き、もう片方をロウ付けしました。このタイプの連結棒は、一般の板の両端に穴をあける連結棒と違って、車軸間の距離合わせが簡単でした。ところで、ステンレスロッドをロウ付けするときですが、四角いパーツの差し込み部分に小さな穴をあけておかないと、空気の膨張でステンレスロッドが飛び出して、せっかく合わせた距離が狂ってしまいます。また、特にぴったり嵌っている場合には勢い良く飛び出して危険なときもあるので、空気穴をあけておくことは必要だと思います。


ハックワース式バルブギア
バルブギア渡辺精一氏の『ライブスチーム』誌には、”最も簡単な機構の弁装置”と書かれていましたが、いざ、一から作るとなると、そう簡単ではありませんでした。確かに構成パーツの数も少ないですし、機構そのものも簡単なのですが、各部の寸法を決めるまでに結構時間がかかりました。何度も寸法を変え、図面上でシミュレーションしました。で、写真が完成したハックワース式バルブギアです。

バルブギアパーツ左の写真はハックワース式バルブギアの構成パーツです。上から、まず逆転シャフトの両端の四角い箱がスライドシャフトで、この中を写真その下の四角い形をしたダイブロック(すべり子)が上下します。その間にあるのが逆転シャフトの軸受けです。その下の長い棒は弁連結棒(軸径2mm)で、その下の3つ穴があいている板が偏心棒(板厚1mm)です。一番下が帰りクランク(板厚2mm)です。


ハックワース式バルブギアの動画を撮りました。少しぎこちないですが、一応動きました。最後に止まってしまったのは、スライドの角度が傾きの限界を超えたからです。傾きの角度の範囲は76度に設定しています。動画は、YouTubeに移動しても見られます。
  


パーツを作り直しました。
車輪ハブ_1ここまで作ってくると、具合の悪い箇所や改良した方が良さそうなところが出て来ます。今回もいくつか出て来て、そのひとつが車輪です。車輪は初め、車軸への固定を単純に接着で済まそうと考えていたので、いつものハブ無しの車輪で作りました。でも、よく考えてみたらハブ付きの車輪にして、ネジ留めでも良かったんですよね。で、もう一度作り直すのも大変(丸棒を切断するのが大変)なので、簡単にハブ部分だけを別に作って車輪の裏にネジ留めすることにしました。写真が出来上がったそれで、ハブをM2首下4mmのネジ4本で車輪に固定しました。

リターンクランクふたつ目がリターンクランクです。普通にバルブギアが動いている時には問題がないのですが、まだ逆転機を取り付けていない関係で、スライドシャフトが大きく傾き止まってしまう時があります。このときリターンクランクがズレてしまいます(通常の位置はクランクに対して180度)。で、これまで弁連結棒を真っ直ぐ偏心棒(Vibrating Lever)につなぎたかったので、薄いのを承知でリターンクランクには厚み2mmの鉄板を使っていましたが、それを今度は厚みを2.7mmに変更し、締め付け用に使っていたネジをM1.4からM1.7に変えました。写真上ふたつが作り直したもの。

偏心棒3つ目は偏心棒です。これも、初めはバルブシャフトの位置から真っ直ぐな所に来るように設計したことによりますが、でも、さすがに1mmは薄すぎるかなと。で、多少外側に広げて、バルブシャフトから一直線状に位置しなくても大丈夫そうなので作り替えました。厚みは1.2mm。少しだけ外形も大きくしました。写真右側のふたつが作り直したもの。

Valvegear_3左の写真は、作り直したパーツに変えて組み直したところを上から撮ったものです。一番外側のシャフトが弁連結棒です。その弁連結棒が少し外側に広がっているのがわかるかと思います。本当はバルブチェストのシャフトの穴から真っ直ぐ伸びて、偏心棒の接続部まで一直線になるのが理想なんだとは思いますが…。車輪の方ですが、ひとつだけ心がズレたみたいで、少し振れが出てしまいました。でも、許容範囲です ^_^;


蒸気分岐管
Steam teeこの蒸気分岐管ですが、JNR8620のときにも作っています。その時は、その構造から組み付けにちょっとしたコツが必要でしたが、今回は、以前『その他の工作』で紹介した"STEAM TRAINS.... In YOUR GARDEN"という本に出ていたOリングを使った方法にしました。仕組みとしては、ちょうど水面計と同じような感じで、バルブチェストから出ている銅パイプにOリング填めてユニオンナットで締め付けます。

リベットとモーションプレート
Motion bracketリベットは、約3mmの長さに切った銅線(Φ1.2mm)をバッファービーム(厚み1.6mm)にあけた穴に差し込んでから、先端を丸くえぐったドリルロッドを当てて、金槌で叩いて丸めました。
モーションプレートは、1mm厚の鉄板を切り抜いてから、折り曲げとロウ付けで作りました。ところで、このモーションプレートを取り付けることによって、却って全体の動きが悪くなってしまうことがあります。正確に作れば問題ないのですが…。今回も寸法が足らなくてスライドバーがフレーム側に引っ張られてしまったようで、車輪が全く回らなくなってしまいました。とりあえず、取り付け部に0.6mm厚の板を挟んで対処しましたが、このモーションプレート、直接走りに関係しないので、つい適当に作ってしまいますが、なかなかの難物です。


また修正
また修正エンドビームとシリンダの間が実機に比べ離れ過ぎていたので、思い切ってフレームの先端を約2mm程切って短くしました。それから、シリンダの取り付け位置も約1mmほど上側に変更し、軸箱の取り付け方法も、これまでのM1.7ネジ4本で取り付けていたものを真ん中2本に変更し、実機にあるその周りの六ヶ所のボルトは、M1.4ボルトをダミーとして使うことにしました。修正前にあけられていた穴は、真鍮の棒を挿してからハンダを流して埋めました。

Frame_4フレームの組み立てに使っていたプラスネジ(M2)を、ちょっとだけこだわって六角ボルトに替えました。ついでなのでバルブギアに使っていたネジもマイナスネジにしました。あと、ダミーのリベットを追加。それと、バルブチェストから出ていた銅管がフレームの上縁から1mmほど上に出っ張っていて煙室の取り付けの邪魔になるので写真の様な形に曲げました。あと、床を固定する為の支えを作りました。この支えは、フレームに銅線でカシメて固定してからハンダを流して取り付けました。これで、ほぼ下回りの工作が終わりました。


床の工作
床板写真は床の裏側に真鍮角棒(2x3mm)をハンダ付けしているところです。このあと角棒に0.8mmの銅線を挿してカシメてから、またハンダ鏝を当ててカシメた銅線にハンダを馴染ませます。角のRは『ライブスチームのシェイを作ろう』の水槽の補強材の作り方を参考にしました。


ステップの工作
Steps_1このステップのように左右2個同じ形のもの同じ寸法で作るのは意外に難しいので、このような場合、2個分を一度に作ってしまってから、その後で半分にしてます。写真は切り離す前。両側に貼り付ける板は、ロウ付けが終わってから寸法通りの大きさに仕上げます。

BufferBeamステップを取り付ける段になって、バッファービームの角の切り欠きが大き過ぎて、ステップの取り付け位置が上の方になり過ぎることに気付きました。なので、バッファービームを作り直しました。リベットも、前のは列が揃ってなくて、ちょっと気に入らなかったので丁度良かったです。リベットの右に写っているのがリベットの頭を丸める為のもので、ドリルロッドで作りました。ドリルロッドの一方を鉛筆の様に細くしてから、先端を丸カッターで半丸にえぐってます。で、これは一応焼き入れしましたが、逆に焼き入れし過ぎると先端が欠けることがあるので、焼き入れはほどほどか、特にしなくても良さそうです。

Steps_2バッファービームの切り欠きを約3mmほど下げました。写真手前が最初に作ったもの。取り付けは、初めにハンダで付けて動かないようにしておいてから銅線でカシメました。


ボイラの工作
Boiler_1今回のボイラも手巻きです。動輪に使った直径35mmのデンスバーを芯にして、銅板に体重をかけて、ほとんど海苔巻きの要領で巻きました。ただ、合わせ目付近だけは手では丸められないので、木槌で軽く叩いて丸くしました。寸法は前回のシェイと同じく直径38mm長さ135mmです。

Boiler_2丸め終わったボイラと、やはりデンスバーを使って丸みをつけた継板です。この後合わせ目の内側に継板を当てて、銅線でカシメて綴じてからロウ付けします。ロウ付けの様子は、いつもと同じなので省略。

Boiler_3完成したボイラです。取り付けられている水面計は前回のシェイと同じ方法で作りましたが、今回は泡抜きのバルブ付きです。なお、水面計本体の材料には、ボイラに直接ロウ付けしてしまう関係で、真鍮ではなく、他のブッシュと同じくリン青銅を使っています。


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